インバウンド回復と構造的円安
現在弊社を取り巻く経営環境の中で注目しているのは、インバウンド訪日者です。ホテル宿泊費についてはコロナ禍前2019年に対し1.7倍の水準に達しております。訪日者数に関しても3,188万人が今年予想4,100万人となっております。弊社としては来年にも4,500万人に達するものと推測しており、今後も引き続きインバウンド旅行客に好まれるホテル開発を進めて参ります。
一方で弊社は2014年から65棟の収益レジデンスを東京都心部に開発し販売して参りました。これについても最低賃金UP及びベースアップが収益改善のカギとなっております。遅効的に住宅賃料はインフレに伴いUPしていくものと想定しております。一方、金利上昇や建築費上昇に対して利回りの低いレジデンスは注意が必要です。1年ほど前からゼネコンが見つからない等の問題が多発しており、
開発事業化を断念する企業も増えています。
そのような観点から弊社は今後売上の20%を収益レジデンスとし、80%をインバウンド用ホテルに配分致します。
現在、不動産デベロッパー業界の悩みは建築費の高騰、更には働き方改革に伴う完全週休2日制の影響による工期延長です。社会全体においても人手不足は問題となっております。レジデンスについては賃料上昇が緩慢であり、建築費高騰を価格転嫁し切れていない状況です。他方、ホテル宿泊費は前述コロナ禍前1.7倍程度でありますが、GOP比率の低いビジネスホテル等は実質利回り上昇へのインパクトは限定的であり、一方固定家賃の建物は、インフレ時代においてオーナーには不利となります。多連泊省人化タイプのホテルは、RevPARの上昇余地が大きいと予想致します。
弊社は不動産デベロッパーでありながら投資専門業を自負しており、常に経済的合理性に基づき不動産開発をしております。現在と未来を見据え最善の建物を建てる事を使命と考えております。
前期売上の80%超が機関投資家向け販売となっており、更に拡大の方向にあります。一方で、弊社は以前から富裕層及び超富裕層を対象とした営業を続けておりますが、本年度より元外資系プライベートバンカーが合流し、ウルトラハイネットワースへのアクセスを更に強めております。
前述ドル円につきましては1ドル130円を下回っても訪日者の数は現在以上と推定しており、初回訪日者に対しリピート訪日者が上回る勢いです。これは日本が安いことのみならず、観光発信や日本の文化、食等日本の魅力によるものと考えております。またSNSの拡大により訪日者が自国に帰り拡散されるメリットも理由の一つと考えられます。足下143円前後となっているドル円相場も定着しホテル運営には大きなフォローです。一方、中国の不景気はネガティブ材料ですが中国人の訪日者数は前年比80%増の訪日人数になっております。更にアメリカからは43%増となっておりポジティブ材料が上回っております。
近年、日本国民も主にアメリカの企業がプラットフォーマーであるSNSや様々な配信を利用しておりますが、その利用料金について、円を売ってドルを買い支払っているという隠れた事実があります。それらのサービスにおける経常収支は5兆~8兆円の赤字と言われております。(デジタル貿易赤字と呼ばれております)日本国民がこのサービスの利用を増やす事があっても減らす事はないと考えられますので、10年前にはない構造的・持続的円安は続く可能性が高いと思われます。自動車産業を始め、海外へ出た製造業が人手不足の日本に戻るケースも少ない為、モノの輸出が増えない傾向も構造的な円安を示しております。
政府も外国人向け宿泊施設が足りない事を危惧しており、DBJ(日本政策投資銀行)が外国人宿泊向け不動産のファンドを100億円設定した模様です。
多少の金利上昇、建築費高騰等アゲインストはあるものの、このような社会情勢を踏まえますと、それらを十分に吸収可能と考えております。不動産投資市場に年間1,000億円程度を供給する為の用地仕入として、直近1年でホテル用地取得28ヶ所、及び中古建物の取得を15棟完了しております。尚、販売成約は32棟を超えております。今後も用地の取得を更に注力し、年間30ヶ所を目標としております。東京のみならず京都・大阪も用地取得しております。
今後も第一リアルターはより良い投資用不動産の提供を心がけ、投資家の皆様にご満足頂ける投資用不動産を供給し続けます。
2025年6月
